不朽の名作「思考の整理学 」を解説。考えすぎないことで、思考は深くなる。

読書の森

情報があふれ、常に何かを考え続けている現代。
それにもかかわらず、

  • 考えがまとまらない
  • 良いアイデアが浮かばない
  • 頭が常に疲れている

そんな感覚を抱えている人は少なくありません。

東大生、京大生にもっとも読まれているという外山滋比古著『思考の整理学』は、そうした状態に対して
「もっと考えろ」ではなく「整理せよ」と静かに語りかけてくる一冊です。

思考の整理学 (ちくま文庫)
外山 滋比古 | 1986年04月発売 | 大学生協文庫年間ランキング2年連続1位! 2018年1月~2019年12月 (大学生協事業連合調べ)歴代の東大生・京大生が根強く支持する異例のベスト&ロングセラー!刊行から34年で124刷・253...

本書は、思考法のテクニック集ではありません。
むしろ、「思考との付き合い方」を根本から問い直す、生活哲学に近い本だと言えるでしょう。


思考は放っておくと“腐る”

『思考の整理学』の核となる考え方はとてもシンプルです。

思考は、整理しなければ価値にならない。

どれだけ多くの知識を得ても、それを

  • 書き出さず
  • 寝かせず
  • 組み替えず

ただ頭の中に溜め込んでいるだけでは、思考は混濁していきます。

外山氏は、思考を「代謝(メタボリズム)」として捉えます。
食べたものが消化・吸収されて身体を作るように、
考えもまた、時間と整理を経て初めて自分のものになるのです。


「忘れる力」は、考える力の一部である

本書の中で特に印象的なのが、「忘却」に対する肯定的な視点です。

一般的に、忘れることは悪いことだと思われがちです。
しかし外山氏は、こう考えます。

忘れることによって、本質だけが残る

すべてを覚えていようとすると、重要なことほど埋もれてしまう。
時間が経ち、不要な情報が自然に削ぎ落とされたとき、
思考はむしろ輪郭を持ち始めるのです。

これは、インプット過多になりがちな現代人にとって、
非常に救いのあるメッセージだと言えるでしょう。


創造的な仕事は「朝」にやる

『思考の整理学』では、思考のタイミングについても語られます。

外山氏は、創造的な仕事は夜ではなく「朝」に行うべきだと述べています。

  • 朝:直感・発想・創造
  • 夜:整理・確認・単純作業

疲れていない朝の頭は、論理よりも柔らかい発想が働きやすい。
逆に、夜に無理やりアイデアを出そうとすることは、
思考を消耗させるだけだというのです。

「努力」よりも「状態」を整える。
この発想は、がんばることが美徳とされがちな価値観を、やさしく裏切ってくれます。


ノートは「きれいにまとめる」ために使わない

本書で語られるノート術も、一般的な方法とは少し違います。

ノートは、

  • 記録するため
  • きれいに残すため

のものではありません。

思考を一度、頭の外に出すための場所です。

完璧にまとめようとすると、思考は固まり、動かなくなる。
雑に書き出し、時間を置き、必要なものだけを拾い直す。
最終的には捨ててもいい。

この「未完成を許す姿勢」こそが、
思考を生かし続けるための整理術なのです。


なぜ今も読み継がれているのか

『思考の整理学』は、決して新しい本ではありません。
それでも長く読み継がれているのは、
現代人の悩みを驚くほど正確に言い当てているからです。

  • 情報が多すぎて疲れる
  • 常にアウトプットを求められる
  • 考えているのに、何も生まれない

こうした状況に対し、本書は
「量を減らせ」「スピードを落とせ」「寝かせよ」
と語ります。

SNSやAIが普及した今だからこそ、
「自分の頭で考えるとはどういうことか」を見直す価値があるのです。


まとめ|がんばらない思考法という選択

『思考の整理学』は、
頭を良くするための本ではありません。

頭と上手につきあうための本です。

考えがまとまらないとき、
自分を責める必要はありません。
足りないのは努力ではなく、整理なのかもしれない。

「考えなきゃ」と力むのをやめ、
「整えればいい」と思えたとき、
思考は不思議なほど軽やかに動き始めます。

静かに、しかし確実に、
思考のあり方を変えてくれる一冊です。

思考の整理学 (ちくま文庫)
外山 滋比古 | 1986年04月発売 | 大学生協文庫年間ランキング2年連続1位! 2018年1月~2019年12月 (大学生協事業連合調べ)歴代の東大生・京大生が根強く支持する異例のベスト&ロングセラー!刊行から34年で124刷・253...

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